「古い家だから、リフォームした方が高く売れるのでは?」
「壁紙が剥がれているけど、直してから売り出した方がいい?」
家を売却しようと考えたとき、多くの方が直面するのが「リフォームすべきか否か」という悩みです。
結論から申し上げます。
日本の不動産市場において、家を売る前に多額の費用をかけてリフォームを行うことは、原則としておすすめしません。
多くの場合、リフォーム費用を売却価格に完全に上乗せすることは難しく、結果として「リフォーム代の分だけ損をする」という結果に陥りやすいからです。
この記事では、不動産売却のプロが「なぜリフォームが不要なのか」という根拠から、逆に「リフォームした方が良い例外的なケース」、そしてリフォームせずに高値売却を実現する最新の戦略までを徹底解説します。
家売却でリフォームが「不要」とされる3つの理由
不動産のプロが「現状渡し(リフォームなし)」を推奨するのには、明確な理由があります。
1. 買主は「自分好みにリフォームしたい」と考えている
現在、中古住宅市場では「安く買って、自分好みにリフォーム・リノベーションする」という層が主流です。売主が良かれと思って行ったリフォームが、買主の好み(色、デザイン、設備)と合わなければ、それは買主にとって「解体対象」となり、むしろマイナス評価になることさえあります。
2. リフォーム費用を売価で回収できない
例えば、300万円かけてキッチンとお風呂を最新にしても、売却価格が300万円アップすることは稀です。一般的には、リフォーム費用の5割〜7割程度しか価格に反映されないため、持ち出し分だけ赤字になるリスクが高いのです。
3. 「リフォーム済み」より「割安感」が選ばれる
買主はポータルサイトで検索する際、まず「価格」でフィルターをかけます。リフォームをして価格を上げるよりも、現状のまま周辺相場より少し安く出す方が、圧倒的に多くの検討者の目に留まり、早期成約に繋がりやすくなります。
【例外】リフォームをした方が有利になるケース
基本は不要ですが、以下のような「限定的な修繕」は、売却期間を短縮し、価格維持に貢献する場合があります。
① 最低限の「補修」が必要な箇所
「リフォーム」ではなく「修繕」です。生活に支障がある場所は直しておくのがマナーであり、成約率を高めます。
- 雨漏り・シロアリ被害: これらは「契約不適合責任」に関わるため、放置して売ることはリスクが大きすぎます。
- 建具の不具合: ドアが閉まらない、床が極端に軋むといった箇所は、内見時の印象を著しく下げます。
② 水回りの「部分的なクリーニング・交換」
家の中で最も古さが目立つのが水回りです。
- ハウスクリーニング: 数万円でプロに依頼するだけで、清潔感が格段に向上します。
- 水栓の交換: 1〜2万円でキッチンの蛇口を新品にするだけで、キッチン全体の印象が明るくなります。
③ 壁紙(クロス)の張り替え
タバコのヤニやペットの臭い、激しい汚れがある場合、リビングの壁紙を張り替えるだけで「明るさ」と「清潔感」が劇的に改善され、早期成約に寄与します。
リフォーム vs 現状渡し 収支シミュレーション
| 項目 | リフォームして売却 | 現状のまま売却(おすすめ) |
| 想定売却価格 | 2,800万円 | 2,500万円 |
| リフォーム費用 | ▲500万円 | 0円 |
| ハウスクリーニング | 0円 | ▲10万円 |
| 実質の手残り | 2,300万円 | 2,490万円 |
専門家の視点: > 上記のように、表面上の売却価格はリフォーム後の方が高く見えますが、最終的な「手残り金」では現状渡しの方が多くなるケースが大半です。
リフォームせずに「高値」で売るための3つの戦略
リフォーム代をかけずに、物件の魅力を最大化する手法が今のトレンドです。
1. ホームステージングの活用
家具や小物を一時的に設置し、モデルルームのように演出する手法です。リフォームほどの費用をかけず、買主の「住みたい」という感情を強力に刺激できます。
2. 「インスペクション(建物状況調査)」の実施
専門家に家の健康診断をしてもらうことです。「古いけれど、構造上は問題ない」というお墨付き(報告書)があるだけで、買主は安心して購入を決断できます。リフォームよりも信頼性を高める効果があります。
3. 「リフォームプラン案」を提示する
実際にリフォームはせず、「この家をリフォームしたらこうなる」というイメージ図と見積書を内見時に提示します。買主は「自分ならこうしたい」という想像が膨らみ、購入のハードルが下がります。
よくある質問(FAQ)
Q. 壁紙がボロボロなのですが、そのまま売り出してもいいですか?
A. 基本はそのままで構いません。ただし、内見時の印象があまりに悪い場合は、「壁紙の張り替え費用分(例:50万円)を価格交渉で値引きする」という姿勢を見せるのが最も賢い戦略です。
Q. 不動産会社に「リフォームした方がいい」と言われました。
A. その不動産会社がリフォーム会社から紹介料をもらっている可能性や、単に「綺麗な方が売りやすい(不動産会社の手間が減る)」と考えている可能性があります。慎重に、リフォーム費用が売価に100%反映される根拠を確認してください。
Q. 「リフォーム済み物件」として売られているのはなぜですか?
A. それらの多くは、不動産会社が「買取」をした後に、自社で安くリフォームを行い、利益を乗せて再販している物件(買取再販)です。個人が一般の工務店に依頼するリフォーム費用とはコスト構造が異なるため、真似をするのは危険です。
まとめ:失敗しないための判断基準
家を売る前のリフォームで迷ったら、以下の基準で判断してください。
- 構造上の欠陥(雨漏り等)がある → 修理が必要(または告知して大幅値引き)。
- 単なる「古さ」や「汚れ」である → ハウスクリーニングと断捨離で対応。リフォームは不要。
- どうしても綺麗に見せたい → 部分的な壁紙交換やホームステージングを検討。
不動産売却の正解は「お金をかけること」ではなく「マイナス要素をなくすこと」です。
まずは、あなたの家を「そのままの状態で」プロがどう評価するか、査定を通して確認することから始めましょう。

