「今の家に住み続けたいけれど、まとまった現金が必要」
「将来の相続や住宅ローンの支払いに不安がある」
こうした悩みを解決する手段として注目されている「リースバック」。しかし、安易に契約して「こんなはずじゃなかった」と後悔するケースが後を絶ちません。
先に結論からお伝えします。
リースバックの最大のメリットは「住み慣れた環境を変えずに、最短2週間で現金化できること」ですが、最大のデメリットは「売却価格が安くなり、家賃の支払いが発生すること」です。
この記事では、不動産実務の専門家としての視点から、リースバックのメリット・デメリットを徹底比較し、あなたが「本当にリースバックを選ぶべきか」を判断するための全ての情報を網羅しました。
1. リースバックの仕組み:なぜ住み続けられるのか?
リースバック(セール・アンド・リースバック)とは、「自宅を不動産会社などに売却し、同時に賃貸借契約を結ぶことで、そのまま同じ家に住み続ける」仕組みです。
- 売却: 所有権を買い手に渡し、売却代金を一括で受け取る。
- リース(賃貸): 新しいオーナー(買い手)に家賃を支払い、借主として住む。
この仕組みを理解した上で、具体的なメリットとデメリットを見ていきましょう。
2. リースバックの「5つのメリット」
リースバックが選ばれる理由は、単なる現金化以上の価値があるからです。
① 引っ越し不要で生活環境が変わらない
最大のメリットです。引っ越し作業の負担がなく、近所付き合いや子供の学区、通院環境などを一切変えずに済みます。高齢者の方にとって、環境の変化によるストレスを避けられる点は非常に大きな魅力です。
② 最短数日〜2週間程度の圧倒的な現金化スピード
通常の不動産売却(仲介)は、買い手が見つかるまで3ヶ月〜半年以上かかることも珍しくありません。リースバックは不動産会社が直接買い取るため、審査から現金化までが非常にスピーディーです。
③ 誰にも知られずに自宅を売却できる
通常の売却ではチラシやネットに物件情報が公開されますが、リースバックは広告活動を行いません。見た目の生活は変わらないため、近所の人や親戚に「家を売った」ことを知られるリスクが極めて低いです。
④ 固定資産税や維持費の負担がなくなる
所有権が移転するため、毎年5月頃に届く固定資産税・都市計画税の支払いがなくなります。また、マンションの場合は管理費や修繕積立金の支払いも(基本的には)不要になります(※契約内容によります)。
⑤ 将来的な「買い戻し」が可能
多くのリースバック契約には「買い戻し特約」を付けることができます。一時的に資金繰りが苦しい時に利用し、数年後に経済状況が回復してから、再び自分の所有物に戻すという選択が可能です。
3. リースバックの「5つのデメリット(落とし穴)」
「うまい話には裏がある」と言われるように、デメリットを正しく理解することが損をしない唯一の方法です。
① 売却価格が市場価格より2割〜3割安い
リースバックの売却価格は、市場相場の70%〜80%程度になるのが一般的です。これは、買い手側が「将来の再販リスク」や「賃借人がいることによる流動性の低下」を考慮してリスクプレミアムを乗せるためです。
② 毎月の家賃が発生し、支出が増える場合がある
住宅ローンの支払いはなくなりますが、代わりに「家賃」が発生します。この家賃は、売却価格に対して期待利回り(通常6%〜10%程度)を掛けて算出されることが多いため、周辺の家賃相場よりも高くなる傾向があります。
③ ずっと住み続けられる保証がない(契約の種類に注意)
ここが最も注意すべき点です。
- 定期借家契約: 期間満了で退去が必要。更新が保証されない。
- 普通借家契約: 借り手の権利が強く、長く住み続けやすい。多くの業者はリスクを避けるために「定期借家契約」を提案してきます。「一生住めますよ」という営業担当者の口約束を信じず、必ず書面を確認してください。
④ 自由にリフォームや改修ができなくなる
所有権は他人にあるため、壁に穴を開ける、設備を最新のものに交換するといった行為にはオーナーの許可が必要になります。
⑤ 買い戻し価格は売却価格より高くなる
「将来買い戻せばいい」と安易に考えるのは危険です。買い戻し価格は、売却価格に10%〜30%程度の上乗せ(諸経費や利益分)がされるのが通例です。売った時より高い金額を用意しなければならない点は大きなハードルです。
4. 【比較表】メリット・デメリットの整理
| 項目 | メリット | デメリット |
| 資金面 | 一括で現金が入る / 税金・維持費消滅 | 売却価格が安い / 毎月の家賃発生 |
| 生活面 | 環境が変わらない / 引っ越し不要 | 自由にリフォームできない |
| 将来面 | 買い戻しのチャンスがある | 退去リスクがある / 買い戻し価格が高い |
| 心理面 | 近所にバレない / ローンの不安解消 | 「自分の家ではない」という喪失感 |
5. 専門家が教える「損をしないための判断基準」
リースバックで成功する人は、以下の3つのポイントを冷静に計算しています。
判断基準1:家賃の総額が売却代金を上回るまでの期間
「売却代金 ÷ 毎月の家賃」を計算してみてください。
例えば、2,000万円で売却し、家賃が15万円の場合、約11年で売却代金が底をつきます。
「その家にあと何年住むつもりか」を逆算し、長生きリスクや資金枯渇の可能性をシミュレーションすることが不可欠です。
判断基準2:普通借家契約を選べるか
「死ぬまで住みたい」のであれば、普通借家契約を提示してくれる会社を選んでください。定期借家契約しか受け付けない会社は、数年後の転売を狙っている可能性が高いです。
判断基準3:他社との「相見積もり」は絶対条件
リースバックは会社によって査定額も家賃も大きく異なります。
A社:売却価格が高いが、家賃も高い。
B社:売却価格は低いが、家賃が安く長く住みやすい。
あなたの目的に合致するのはどちらか? 最低でも3社以上の比較を行うのが不動産業界の鉄則です。
6. リースバックが向いている人・向いていない人
向いている人
- 老後資金を確保したいが、今の家を離れたくない高齢者の方
- 住宅ローンの返済が苦しく、競売を避けたい方(任意売却との併用)
- まとまった事業資金が必要な個人事業主の方
- 相続対策として不動産を現金化しておきたい方
- 「数年だけ」住み続けたい明確な理由がある方
向いていない人
- 1円でも高く自宅を売りたい方(仲介売却がベスト)
- 毎月の固定費(家賃)を抑えたい方
- 一生涯の居住を100%保証してほしい方
- 将来的に資産を子供に残したいと考えている方
7. よくある質問(FAQ)
Q. リースバック後に家賃を滞納したらどうなりますか?
A. 通常の賃貸借契約と同じく、数ヶ月の滞納で契約解除となり、退去を迫られます。リースバックでは「売却代金があるから大丈夫」と油断しがちですが、計画的な資金管理が重要です。
Q. 修繕費(給湯器の故障など)は誰が払うのですか?
A. 原則としてオーナー(買い主)が負担しますが、リースバック契約では「小修繕は借主負担」という特約が付くケースが非常に多いです。契約書の「修繕に関する項目」は必ずチェックしてください。
Q. リースバックしたことが子供にバレますか?
A. 登記簿謄本(全部事項証明書)を見れば、所有者が変わったことは分かります。後々の相続トラブルを避けるためにも、推定相続人(お子様など)には事前に相談しておくことを強く推奨します。
結論:リースバックは「時間と環境を買う」ための手段
リースバックは、決して「得をする不動産売却術」ではありません。
経済的な合理性だけで言えば、普通に売却して安い賃貸に引っ越す方が手元にお金は残ります。
しかし、「住み慣れた家、地域、思い出をそのままに、資金難を解決できる」という価値は、お金には代えがたいものです。
メリットとデメリットを天秤にかけ、「家賃を払ってでも守りたい今の生活」があるかどうか、今一度考えてみてください。
プロからの最後のアドバイス:
1社だけの査定で決めないでください。リースバックは「不動産取引」でありながら「金融取引」の側面も持っています。条件の比較こそが、あなたの大切な資産を守る最大の武器になります。

本記事の執筆にあたっての留意事項
※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、特定の契約を推奨するものではありません。
※契約条件は会社によって大きく異なるため、詳細は必ず複数の専門会社へお問い合わせの上、ご自身の責任でご判断ください。
